同じ薬品でも違う名前の場合がある

医薬品にはそれぞれ名前がついています。それらは開発した製薬会社が独自につけたものであり、成分とは何ら関係のない名前であったりもします。

そのため、同じ成分の医薬品でも違う名前で販売することができます。それは製薬会社の自由ということになっています。どうして同じものなのに名前をわけるのかというと、「用途」によって呼び方を変えた方が特化できるからです。店頭などでそれらの医薬品に触れる際、「あれもできる、これもできる」ということでは「効能」に対して疑いたくなってしまいます。なんでもできる薬などはないだろうということが、私たちが一般的に思うことなのです。

それでは実際にそのような薬があるのかというと、あります。緑内障の薬で「ルミガン」というものがあります。それは「眼圧」を下げるための薬であり、アメリカで認可されている医薬品です。ですが、その副作用として「まつ毛が伸びてしまう」という効果が確認されました。テストをしてみても、明らかに伸びているのです。まつ毛が伸びること自体は、それ自体は歓迎する人もいます。何度テストをしても顕著であったため、その製薬会社はその「ルミガン」を「まつ毛美容液、まつ毛育毛剤」として販売することにしました。

それは「ラティース」という名前でパッケージを新たに販売されることになりました。ラティースにはただの点眼薬であったルミガンとは違い、まつ毛に医薬品を塗布するためのブラシが付属され、価格もルミガンよりもだいぶ高く設定されました。中身はルミガンもラティースも同じものです。ですが、パッケージが違うだけで価格が違い、それぞれ自分が望む用途のために購入する人が増えたのです。ラティースは世界中のセレブたちに受け入れられ、まつ毛育毛剤としては圧倒的な人気を誇るようになりました。

「副作用」を利用して点眼液を美容液としてパッケージングしたルミガン・ラティースの例は、ひとつの医薬品が2つの用途を成した良いケースです。ただ、美容目的の場合はルミガン・ラティースを直接目に触れさせてはいけません。ルミガンはもともと眼圧を下げる薬ですから、健康な目には悪影響があるのです。ですから別パッケージというのはそのように「安全に使うため」の配慮でもありました。それぞれの注意書きには別々のことが書かれているのです。ルミガンには「副作用としてまつ毛が伸びることがある」と記されていますし、ラティースの方には「直接目に入れてはいけない」と書かれています。

あくまでもまつ毛が伸びることは「副作用」であったのですが、それが誰に対しても有効であったためのふたつのパッケージでした。このように、医薬品にはさまざまな可能性が秘められていて、ひとつの医薬品を開発する労力だけで同時にふたつの商品が完成してしまうこともあるのです。ルミガン・ラティースはアメリカでは事故などでまつ毛を失った人に対しても処方されるほど、まつ毛の育毛に対しては有効だと認められているのです。

医薬品のことを知れば知るほど、「実は同じ薬」ということもあるのです。そして、パッケージが違うだけで価格が違うことも多々あります。用法が違うだけで値段が上がっているということです。

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